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あわてて救急車を呼んで広尾病院に連れて行ったけど、そのときはもう心臓は止まってた。 兄弟たちに連絡を取ったけど、暮れの世の中が一番わくわくしているときで、なかなか連絡が取れなかった。助細動装置をとりたいんだけど承認して!・・・と電話口で騒ぐんだけど意味がわかってもらえなかったみたい。 実は、救急隊の一人が高度医療を受けますか?と聞かれたときに、夫が”はい”と答えたのが、この結果につながっている。義母にはかわいそうなことをしてしまった。 最近は虐待死が多かったため、病院で死んだとき以外は解剖があります。日を改めて、東京都監察医務院による解剖と、当日の調書を書くための取調べがあり調書となりました。 暮れに葬儀を行い、年が明けて病院にクレームを入れました。なぜ、診察してもらえなかったのかと・・・。裁判になったらと考えていたのかもしれませんが、何も答えてもらえませんでした。最近は、病気は見られるけど、人はわからない医者が多いのかもしれません。 お医者さんなら、何でもわかってもらえると思った私がまずかったのかもしれません。また、今まで母の件では何でもわかってもらえたお医者さんとお付き合いしてきて、お医者さんに絶対の信頼を置いていた私がばかだったのでしょう。 病院での話し会いの最後に、お医者さんに”あなたも私も加害者なんですからね、それは一生忘れないでくださいね。”と、お願いして帰りました。女の医者でした。
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あなたの隣に レジェンディア 「melfes 〜輝ける青」の弦楽器ソロ版 かの曲が壮大なオーケストラ曲であったのに対して、こちらは チェンバロなどによる目の覚めるほどの高音による優しげな旋律が持ち味。 一言で言えば「癒し系」の曲であり、聴いているだけで気持ちが穏やかになってくる、 椎名氏曰く、この曲は作成までに非常に時間が掛かったが、非常に熱気ある 環境で生み出された思い出深い一曲であると語ってくれている。 関連リンク melfes 〜輝ける青
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元ネタ:あなたに逢いたくて~Missing You~(松田聖子) 作:ヤジピンク 気団のスレの ネタ師に釣られ 名無しレスには"さよなら"告げた あれから数年の時間が流れて やっとヤジれるのよ 毎日 ヤジウマンしているわ 新しいネタ師を私なりにヤジってる レッドに逢いたくて 逢いたくて 眠れぬ夜は レッドのマジレスを あのマジレスを思い出し そっと包茎と書いてみる 検索タグ J-POP ヤジ2chネタ ヤジピンク 1コーラス以上 メニュー 作者別リスト 元ネタ別リスト 内容別リスト フレーズ長別リスト
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作曲 目玉P 作詞 ドラ藤本 歌 初音ミク(目玉P本人がMEIKO、鏡音リン、鏡音レン、巡音ルカにカバーさせたものを投稿している) 私ですか 私がなにか 私がすべきことですか? 私ですか 私ですか 私それ 必要ですか お待ちください 少し待って だから落ち着いてください 私ですか 私ですか 私 忙しいのです 僕はいいよ 僕にはいいよ 僕は遠慮しておくよ 僕はいいよ 僕はいいよ 僕はすべき事がある 陽が沈む 夜に ほら 動きだした もう 止められない 掴めない 戻れない 迫る旋律のバスタード 唸る閃光のバスタード 来た!おぉ… 魂 ぐらつかせ イライラ 苦悩する もう 耐えられない 今感じた 鉛筆を 折るほど震えさせ 魅惑の迷惑感 俺は駄目だ 俺には無理だ 俺は嫌だやめてくれ 俺は駄目だ 俺は駄目だ 俺を怒らさないでくれ 日が沈む夜に ほら 動きだした もう 止められない 掴めない 戻れない 迫る旋律のバスタード 唸る閃光のバスタード 来た!OH 魂 ぐらつかせ イライラ 苦悩する もう耐えられない 今感じた 犬歯剥き ギリギリ がなりだす 魅惑の迷惑感 魂 ぐらつかせ イライラ 苦悩する もう 耐えられない 今感じた 少しなら いいかと 逃避する 魅惑の迷惑感
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380 未来のあなたへ6.5 sage 2009/04/21(火) 23 42 31 ID go0V6KJ3 「あ」 三月の中旬、日曜日。市内にある公立高校の校庭に、私服姿の人垣ができていた。その前には数個を連結された掲示板がそびえている。 人垣の構成人員は主に中学生の少年少女。付き添いらしき大人の姿もある。皆一様に期待と不安を抱きながら、立てられた掲示板の番号を目で追っていた。 結果を確認した人間から人垣から離れ、数人のグループがあちこちにできて雑談に興じたり、携帯電話で結果報告を行ったり、さっさと帰宅したりしている。 そんな光景の中、人垣からやや後ろに陣取っていた少女は小さな声を上げた。数字羅列の中に、あっさり自分の番号を発見したのだ。そのこと自体に、特に感慨はなかった。 隣で本人以上に緊張して掲示板を睨んでいる、付き添いの少年の袖を軽く引っ張る。 「兄さん、番号、ありましたよ」 「えっ!? 本当か優香、どこだ!?」 短髪でやんちゃそうな少年が、大声を上げて周囲の注目を浴びた。悲喜交々の溢れる場所だが、集中と緊張のために感情を露わにするのは控えられている。 少女はにこやかに微笑んで兄の足を踏んづけた。小さく悲鳴を上げる少年を尻目に小さく一礼、それで衆目の視線は掲示板に戻る。 抗議の視線を向けてくる兄に、少女は目線と人差し指で受験番号の一つを示した。その番号と記憶の一致を果たした少年は再度大声を上げながらあろう事か少女に抱きついた。 「やった、やったな優香!」 「きゃ……!」 周囲の人間も、事前の件で少年が感情的だとわかっていたので今度はそこまで注目しなかったのが、少女にとって不幸中の幸いだった。柄にもない悲鳴を上げてしまったことに焦る。後で説教一時間コース決定。 そうして榊優香は、兄こと榊健太と同じ高校に合格し、来年度から高校生になることが確定したのだった。 381 未来のあなたへ6.5 sage 2009/04/21(火) 23 43 26 ID go0V6KJ3 それからしばらくして、榊兄妹は高校と家を繋ぐ通学路を二人並んで歩いていた。八分咲きとなった桜の花が、あちこちで風に揺られている。 来る時はバスだったのだが妹の希望で、今日は徒歩で帰宅することになっていた。既に家には合格の旨を連絡しており、両親は小躍りしながら娘の帰宅を待っている。昼食は豪勢なものになりそうだ。 二人の格好は軽装で、兄がチェック柄のワイシャツにズボン、妹は厚手のワンピースにカーディガンを羽織っている。既に日は昇り、春も近い。 「全くもう。公衆の面前で女性に抱きつくなんて何を考えているんですか兄さんは。いえ何も考えていませんでしたね申し訳ありません。これが私でなければ痴漢扱いされて最悪逮捕、実刑です。そんなことで人生を棒に振りたいんですか」 「だから悪かったって。嬉しかったんだから仕方ないじゃないか。それにほら、家族のスキンシップだって」 「通報しますよ?」 「ごめんなさい」 がみがみとした説教は既に一時間に及んでいる。頭も下げて謝る健太だったが、結局商店街に寄ってアイスを奢ることになった。三月とはいえ昼間の陽気はやや汗ばむほどだ。 こういう態度の妹は珍しい、まあ長い長い受験戦争がやっと終わったのだから、しばらく羽目を外したいんだろう、と健太は考えて納得した。 それに勿論、兄として一足早いお祝いの意味もある。 「でもさ、優香だって嬉しいだろ?」 「いえ、別に。元々合格圏内でしたし、充分以上に勉強はしてきましたから、予想できる結果でしたよ」 「そうだよな、優香はずっと頑張ってきてたから、当たり前か。あ、けどそれなら推薦受けれたんじゃないのか?」 「そういう話もありましたね。ですがこの際、知識を深めておきたかったので勉強の時間を長く取らせてもらいました」 「とにかく、優香が頑張っていたことは俺が知ってるから、もっと自慢していいんだぞ」 「人の話を聞いていますか?」 推薦の中には県外の高偏差値校の話もあったのだが、優香はばっさり断っている。面倒なので兄には話していない。 実際のところ、ここ半年における榊優香の勉強は学力を伸ばすと言うよりひたすら知識を深めるためのものだった。彼女が求めるのは成績ではなく賢くあることなのだから。 とはいえ彼女は学力自体も同年代からは傑出した水準にある。進学先でもトップクラスの成績を維持することはほぼ間違いなかった。 そんな雑談をしている内にアーケードへたどり着く。表通りにあるアイスクリーム屋は、日曜日の昼前と言うこともあり短い行列ができていた。カップルの姿も多い。 二人並んで雑談の続きをしながら列が縮むのを待つ。 「優香は、また柔道部に入るんだろ?」 「はい、そのつもりです。兄さんは空手部ですから見る機会もありますよね。女子柔道部はどんな感じですか?」 「やっぱり男子柔道部の方がずっと大きいかな。女子の方の部員は十人ぐらいだと思う。けどかなり熱心にやってるよ」 「そうですか、特に問題はなさそうで何よりです」 部活動の細々としたことを話していると、行列が縮んで店員が現れた。 妹はさっさと抹茶のシングルに決めるが、兄は唸りに唸ってやっと新製品のパンプキンジェラートを買い求めた。この時決断に要した時間差は約二分、このカップルめと店員の笑顔をやや引きつらせることに成功。 店先を離れて、アイスを一舐めしてから早速妹が文句を付ける。 「兄さん、ああいう場所での注文は並んでる内に決めておくものですよ。恥ずかしい真似は辞めてください」 「いや、決めてたんだけど列で見えなかったところに新製品があってさ。両方頼もうかとも思ったけど、昼近いのにダブルは無理だろ? どうしようかなーって」 「ふう。言ってくれれば私が新製品の方を頼んで半分ずつ分けるということもできましたが」 「おお、頭いいな……ってダメだろっ! その、俺と優香は兄妹とはいえ男女なんだからさ」 「ああ、間接キスですか? そんなことをいちいち気にしてるから兄さんはガキなんですよ」 「とほほ……」 がっくりと肩を落としてパンプキンジェラートを舐める少年。彼からは見えない位置だったが、少女の首筋はその時真っ赤に染まっていた。 382 未来のあなたへ6.5 sage 2009/04/21(火) 23 44 11 ID go0V6KJ3 しばらく二人、アイスを舐めながら無言で歩く。やがてコーンまで囓り終えてから、そういえば、と優香は切り出した。 既にアーケードは抜けて、住宅街に向かう川に沿った道を歩いている。川沿いに植えられた桜の木が、ぱらぱらと桃色の花びらを散らしていた。 「桜、綺麗ですね。去年と違って今年は咲きが早いですから、入学式までには雨に打たれて散ってしまうでしょうね」 「ん……そうかもな」 声のトーンがダウンする。健太は目を細めて、桜の花とその向こうを眺めているようだった。おそらく、その花と同じ名前を持つ少女のことを。 つい二週間前に、榊健太は初恋の先輩と離別した。恋自体は片思いで、聖夜に告白して振られている。そしてその先輩は、卒業と同時に引っ越して行ってもう会えもしない。 どう考えても恋は終わっていて、吹っ切っていくしかない状況だった。 けれど、それでも二週間しか経っていないのだ。とても吹っ切れてはいない。 「なあ、優香。雨に打たれた花びらには意味がないのかな」 「は? いえ、率直に言わせてもらえばゴミかと思いますが」 「俺はそうは思わない。落ちた花びらは悲しいものだけど、そこにしかない悲しさがあるんだ。だったら、それはまっすぐに見れば価値があるものじゃないか」 「…………」 兄が桜を眺めながら口にする屁理屈に、妹はその背中を見ながら眉を寄せた。珍しく、はっきりと不機嫌な表情だった。 榊健太は物事を言語化するのが苦手で、更に詩的な表現を気恥かしがる。元々こういう表現をするような人間ではなく、明らかに誰かの影響、入れ知恵だ。 春という季節が嫌いになりそうだと優香は思った。この桃色の花びらを見るたびに、汚されたことを思い出す、そんな季節になりそうだと。 嘆息し、二度手を鳴らす。パンパンと乾いた音が響いて、健太は夢から覚めたようにはっと体を震わせた。どんな夢を見ていたのかは定かではない。 「行きましょう」 「……ああ」 383 未来のあなたへ6.5 sage 2009/04/21(火) 23 45 07 ID go0V6KJ3 その日の榊家の昼食は寿司(松)の出前だった。言うまでもなく長女の合格祝いである。 両親は喜んでいたが、特に母親の小躍りっぷりは半端ではなかった。何か欲しいものがあったらなんでも言ってと、何度も聞き出そうとするくらいだった。娘からは特に希望もなかったが。 榊家では母親はどちらかといえば娘を、そして父親の方は息子を贔屓している。母親にとって(出来の悪い息子と違い)娘は自慢の種なのだった。とはいえ、娘がそれに感謝しているのかと言えばまた別の話となる。 さておき、一緒に出かけようとひっつく母親を振りきって、優香は午後から町にある喫茶店に来ていた。待ち合わせた相手は友人である。 「やほー、優香ちゃんお久しぶり。合格おめでとーございます」 「卒業式以来ですね、久しぶりです。ここは奢るから好きなもの頼んでいいですよ」 「え、いいんですか? っていうか、普通奢るのは逆じゃないんですかね、お祝い的に」 「そちらの金欠は理解してますし先程母からお祝いということで現金をもらいましたから問題ありません」 「ちーっす! それじゃ店員さん、えーと……オレンジジュースとイチゴショートお願いしまーす」 友人こと藍園晶は店員にいそいそと注文した。服装は短めのスカートに厚手のシャツ、その上にパーカーを羽織り足元はスニーカーで固めている。小さな体躯を活発的に飾っているが、実はほぼ一張羅に近い。 藍園晶と榊優香は、概ね親友と言っても良い間柄にある。中学では大体『つるんで』いたし、二人とも色々と猫を被っているので率直な物言いをできるのはお互いだけだ。 進路は完全に別れたのでこれからは疎遠になっていくだろうが、ささやかな祝いの席を開くぐらいの関係はこれからも維持していくつもりだった。 ちなみに公立高校に進学した優香とは対照的に、晶は若い身空でフリーターだった。今のところは近所の総菜店(コロッケ屋と言った方が正確)とカラオケボックスで働いている。 「藍園さん、仕事の方はどうですか?」 「いやー、立ちっぱなしで働くのはやっぱ辛いっすねー。仕事終わる頃にはもう脚がくがくですよ」 「お疲れさま。やっぱり大変そうですね」 「今更ですが、世の労働者は尊敬ものですね。最近の日課は彼氏にマッサージしてもらうことっすよ」 「ふうん……あれ、呼び方変えたんですか?」 「はい。何時までも先輩先輩って、学生気分じゃいられませんから。卒業を機会に義明さん呼ばわりにさせてもらいましたよ、えへへ」 「よかったですね」 ややげんなりとしながら優香は紅茶を啜る。晶は確かに数少ない友人ではあるのだが、恋人との惚気話を頻繁に持ち出すのが難点だった。 とはいえその方向での先達として実に頼りになるし、劣悪な環境で生きてきたせいか犯罪じみた思考にも柔軟だ。貧困であることも含めて欠点も色々あるが、基本的に自立した人間であることも大きい。 ついでに晶は妙な尊敬を優香に抱いているようで(報酬は必要だが)大抵の頼み事は引き受けてくれる。今の優香にとって重要な関係と言えた。 そして何より、彼女は現時点で唯一の協力者だった。 384 未来のあなたへ6.5 sage 2009/04/21(火) 23 45 43 ID go0V6KJ3 「それで高校入学したらどうするんです?」 「何がですか」 「攻勢かけるにしても微妙ですよね。条件は中学までと一緒になっただけだし、それができるんだったらとっくにやってるって話です。もう一つくらいはプラスαが欲しいんじゃないですか?」 「……」 「ていうか、それが片羽先輩だったわけですけど。あれはぶっ飛びましたよね。考えてみれば充分有り得る話だったんですけど、なんとなく榊先輩は色恋に無縁な気がしてて」 「私もです。あの人が誰かに恋することを……想定はしていたはずですが、まるで実感がありませんでした」 「ですよねー。まあそれでも、惚れられるって展開はまるでなさそうなのが榊先輩らしいっていえばそうですが」 「それは私に対する侮辱か何かですか?」 「おっと失礼しました。約一名を除き、ですね」 仏頂面の優香に対して、にゃははと笑う晶。そこで注文したケーキとジュースが届き、晶は歓声を上げてスプーンを取った。一心不乱にクリームへ集中する姿に優香は嘆息する。 藍園晶が榊優香の特殊な嗜好を言い当てたのは中学二年の頃にまで遡る。教室で昼食後に雑談をしている最中、まるきり他愛ない話題のように言い出したのだ。 勿論優香は当初徹底的に否定したし、口封じも考えた。しかし晶はあっさりと白旗を振って、協力するから助けてと冗談交じりに頭を下げた。優香の思考を読み切った対応であり、彼女に取っては敗北に等しい。 とはいえ、敗北感だけで殺人に至るほど榊優香も愚かではない。いざというときの準備はしているが、利用できる相手であることは理解している。 勿論いくつか疑問もある。どうして異端視しないのか、どうして協力など申し出たのか、そして何よりどうして見抜けたのか。特に最後は、好いた相手にその事実を徹底的に秘匿している優香にとっては死活問題だ。 ちなみに訪ねてみた時の返答は『見る人が見れば一発っすよ。だって好き好きビーム発射してるし』という訳のわからないものだった。 動機は不明だし、手の内を全て明かしたりはしないが、こういったことを話題にできるガス抜きとしては藍園晶は極めて貴重な関係と言えた。 「同じ場所に通うわけですから、この一年間よりは遙かに状況の把握はできると思います。ただしリミットは二年間、その範囲内で攻勢は必要でしょうね」 「あまあま。大方針に変わりなしってところですか。まあ脅威は去ったし、性急に事を進める必要はないですからね」 「……いえ」 「そういえば、柳沢先輩どうするんですか? ぶっちゃけ、もう用済みっしょ?」 晶がさらりと話題に出したのは、健太の同級生にして友人のことだった。 柳沢浩一はやや長身に身だしなみを崩した少年で、性格は軽薄で積極的。そして榊優香に惚れていて、今まで何度もアプローチをかけている。 今まで優香はその好意を利用し雑談しながら健太の行動を逐一報告させ、アプローチは巧みにかわしていくという日々を送っていた。 しかし先程彼女自身が口にした通り、同じ学校に通うのなら状況の把握は容易になる。そういう意味では彼の利用価値は減少する。 「そうですね。身辺整理をして、それから……」 「あ、やるんですか? やっちゃうんですか? 経路は動機は日付は時間は現場は凶器は人数は始末はトリックはアリバイは?」 「突然生き生きしないでください。どうしてそこで刑事事件になるんですか。普通に交際の意思がないことを伝えるつもりですよ」 「えー、でもそれで諦めなかったらどうするんですか?」 「浅い付き合いですが、頭はおかしくないと思いますよ」 良くも悪くも常人だ。片羽桜子に振られて諦めた、榊健太と同じように。 それとは逆に榊優香は、何をどうしても諦められない、ある種おかしな人間だと自己評価している。そこに自嘲はない。 「でもあれですね、せっかく自分に惚れてる相手なんだし、普通に振るよりなんかに利用できないですかね」 「口元が邪悪な子鬼のように歪んでますよ、藍園さん」 「おっとと、えへへっ」 かくして藍園晶がもう一つケーキを完食し、別れの挨拶をかわして茶会は終わった。 385 未来のあなたへ6.5 sage 2009/04/21(火) 23 47 25 ID go0V6KJ3 その日の夜。 夕食(洋食レストランで家族揃って外食)が終わり、榊優香は部屋で一人、日課の採集物整理を行っていた。 概ね整理が終わった頃にきっちり二度、部屋のドアがノックされる。彼女は即座に収集物を机に仕舞い鍵をかけ、席を立ってゆっくりと部屋の鍵を開けた。 部屋の前に立っていたのは彼女の父親である。手には小さな紙袋を携えていた。 「いいか?」 「何の用でしょう」 「たまには親子の語らいでもしようかと思ってな」 「とってつけたような理由で不自然なのですが断る理由もありませんね、どうぞ」 招かれ、榊父が部屋にあがる。ひょろりとした長身に黒縁メガネ。ゴルフシャツに綿ズボンと、あたりさわりのない格好をしている。 まだ四十に届くかどうかといったところだが、きっかりとした立ち居振る舞いのせいでいくつか老けて見える。表情に乏しく、冗談が下手で、雰囲気自体も薄い。それでよく商社に勤めているものだと、家族は常々感心している。 部屋に入った榊父は椅子が一つしかないと見るや、さっさと壁に背中を預けた。いい年をした男性が娘のベッドに腰掛けるもどうかという判断らしい。優香は椅子に腰掛けて向き合った。 「それで、なんでしょう」 「まずは改めて、合格おめでとう」 「ありがとうございます」 「これは僕からの合格祝いだ」 ぽん、と紙袋が渡される。軽い。優香が中身を確認したところ、見慣れない医薬品の箱が入っていた。軽量薄型十二回分。 「説明を求めます」 「コンドーム。男性用避妊具だ。使用方法は取扱説明書を参考にすれば良い。箱を持ち歩くのが嵩張るなら、一回分だけを財布に入れるのが一般的な携帯方法だろう」 「ぶっ殺しますよ父さん。私が聞きたいのは用語説明ではなく、どうしてこんなものを渡すのかという動機です」 「お前も来年度から高校生だ。責任能力としては望ましくないが、可能性がある以上は事態の悪化を回避するために適度な予防策を講じるのは当然だろう」 とりあえず優香は紙袋を力の限り、父親に向かって投げつけた。空気抵抗で減速したそれは、ぱしりと簡単に受け止められる。 ふむ、と紙袋を一瞥して榊父は頷いた。その動作に多分意味はない。 「不必要か?」 「不必要です」 「なるほど、わかった。必要になった際はコンビニエンスストアか薬局で買い求めるように」 「二つよろしいですか」 「ああ」 「嫌がらせですか?」 「いや、そのような意図はない」 「ではもう一つ……兄にも渡したんですか?」 「ああ、去年に」 返答を耳にするや否や、榊優香は自室を飛び出して隣室に突入した。娘の部屋に残った父親からは、どたんばたんと物音及び悲鳴、聞き苦しいやりとりが続き、しばらく後に着衣を乱した優香が意気揚々と凱旋した。 手にはティッシュに包んだ未使用のゴム製品。それがゴミ箱に捨てられるのを見届けてから、榊父は口を開いた。 「言い忘れたが、去年の健太も受け取りを拒否したぞ」 「ああ、では兄さんの言い訳は本当だったんですね。なら柳沢さん経由でしょうか……まあ結果オーライです」 「優香よ、なにやら男の尊厳が打ち砕かれたような気がするのだが」 「だからなんですか」 特に弊害はないと判断したのか、榊父は軽く首肯した。この場に榊母か息子がいれば、盛大に非難の声が上がっていただろう。 昔からそうなのだが、この父娘は思考形態が似通っていた。性格が似ているわけではない。優香はかなりの潔癖性だし実のところ沸点も低いが、榊父にはそういったところはない。 共通しているのは、まず論理を組立てることを何より優先する点だった。感情すらも論理に組み込み、なんとなくという概念を嫌う、言ってしまえば学者バカ的なところが二人にはあった。 そのため二人で会話をする時は、ほぼかみ合う。そういう会話はストレスが溜まりにくいものだし、優香は父親に対してそれなりに敬意と気安さを感じていた。反面、母親との会話はかみ合わないこと夥しい。 「ところで優香」 「はい」 「健太に思うところでもあるのか?」 「いえ、別に」 「そうか」 386 未来のあなたへ6.5 sage 2009/04/21(火) 23 47 57 ID go0V6KJ3 用は済んだとばかり榊父が壁から背を離すのを、優香が片手を上げて押しとどめた。もう片方の手は呆れたとばかりこめかみに当てられている。 目を閉じて小さくため息をつき、彼女は父親を非難した。 「父さん。自分の中の結論から話す癖をやめてください」 「ふむ……優香、受験に当たって県外高校への推薦をいくつか断ったようだが」 「今更ですね。はい、断りましたよ」 「それは家から離れたくなかったからか?」 「ある意味では。一人暮らしや遠距離通学までして進学する必要を感じなかったからです」 「だとして、進学先が健太と同じ高校なのは何故だ?」 「何故も何も、市内で最も偏差値の高い公立高校はあそこだけでしょう。私なりに我が家の財政を考慮したつもりですが」 「うむ、一見不自然ではないな。それでは何故、健太があの高校にいる?」 「進学したからでしょう。そんなことは本人に聞いてください」 「しかし息子の学力は、中学三年に進級時点で、とても合格ラインには届かなかった。それを監督し懲罰し指導したのはお前だ」 「まあそうですね」 「であるなら逆説的に、お前は健太と同じ高校に通うために、健太を監督したのではないか?」 論理の筋道を説明し終え、人差し指を立てて確認する榊父。優香は即座に否定した。 「そんな意図はありません。私は最低限、兄さんが落伍者になるのを阻止しただけです。そういう意味で心配だったのかと聞かれれば、その通りですが」 「なるほどな」 「そもそも、父さんの言う『思うところ』とはどういう意味合いですか?」 「いわゆるブラザーコンプレックスを想定していた」 「範囲が曖昧すぎますね。いえ、それでも私が兄さんに対してコンプレックスを抱くどんな由縁があるというのですか?」 「ないな、お前は優秀だ。母さんも優香の方を可愛がっている。健太がお前にコンプレックスを抱くというのなら理解もできるのだが」 「兄さんのコンプレックスなんて背丈ぐらいのものでしょう。あんな能天気な人間はそうそういませんよ」 実際は、片羽桜子に盛大に振られた後なので女性コンプレックス気味だが、そのことを優香は飲み込んでおく。 榊父の方も、能天気具合では息子と妻のどっちが上かと思案し、更に娘の胸に対する偏った拘りについても考えたが、本筋に関係ないので捨て置いた。 「確かに由縁は何もないが、しかし優香の行動がそう見えたのでな」 「だから私に確認してみたということですか。相も変わらずストレートですね」 「褒めるな」 「褒めてません」 そうして榊父は、後は雑談も交わさず娘の部屋を後にした。優香が食い下がらなければ質問に答えた時点で退室していただろう。 他人の話を聞かない、というわけではない。無駄と判断したことは徹底的に省いているだけで、聞かれない限り自分の意見を口に出すことも滅多にない。 自分とまるで違う息子にはかなり甘かったりもするが、分かりづらいし誤解を解く努力もしないし、冷血と言われても仕方のない人間ではあった。 さておき父親が出て行ってから、優香は深刻な顔になって手帳を取り出し、何ページかを修正した。 熟考。 「もう……あまり時間はなさそうですね」 「……終わり、か」 かくして、年は進み 榊優香の地獄が、口を開く。
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「青春の日々にこそ、お前の創造主に心を留めよ。苦しみの日々が来ないうちに。『年を重ねることに喜びはない』と/言う年齢にならないうちに。」(コヘレトの言葉12 1) 「生きる意味が分からない」「生きることに疲れた」「死にたい」などの言葉が、ネット上で氾濫しています。今の私たちが直面している問題は「生きる意味の不在」ではないでしょうか。インターネットで世界の情報をリアルタイムに得ることができる便利な社会。しかし、それは必ずしも幸福と満足を与えているわけではなく、人々は生きることの空しさを感じています。 人は生きて行くうえで、多くの悩みと苦しみ、逆境と試練を通らなければなりません。これら問題の根底にある「人生の意味」が明らかにされない限り、どんなに対策を講じようとしても水面に描いた絵のように空しいものです。「生きる意味は何なのか。」だれも、その質問に答えることができないのです。政治によって、この問題の答えを与えることができるでしょうか。その答えは「NO!」です。青少年の健全な成長や犯罪防止のために、国で法律を作って一般道徳や生きる術を教えることはできても、一人一人が生きる「意味」を与えることはできません。これは、日本だけではなくどこの国でも直面している問題であり、若者だけの問題ではなく、すべての年代の人に関する深刻な問題なのです。 世界保健機関によれば、2,000年には100万人が自殺しています。日本では、年間自殺者が3万人を越えています。現実にはその10倍とも言われる自殺未遂者がいるため、毎日1.000人の日本人が自殺に追い込まれていることになるのです。交通事故の年間の死者数が6.000人台であることを考えると、これは異常な数字ではないでしょうか。 自分だけはそういうことにはならないと言えるでしょうか。どんな逆境に遭遇しても、「生きるのはこのためだ!」という明確な目的を持っていますか? あなた自身も周りの人たちも、追い込まれてから生きる目的を探すのでは遅過ぎます。そのときには、苦しみに耐え切れず自殺してしまう人が多いのです。「生きる目的」など、そこまで深刻に考えなくてもと思っている人も、肉体的にも精神的にもまだ元気なうちに真剣に考えなければなりません。 問題の解決は、聖書の中にあります。「生きる意味は何か。」という深刻な問題の解決は、目先の表面的なことでは不可能です。人間の「原点」に帰らなければなりません。学校で教える進化論はあたかも科学的であり、事実であるかのように大部分の人たちが考えていますが、偶然をその根拠においている点で全く非科学的であり、非理性的であります。時計は時間を計るためにあり、家は人が住むために造られます。人間は、偶然に出来た産物ではなく、創造者(God)によって造られた存在なのです。造られた存在であれば、当然、そこに創造者が与えた意味と目的があるのです。聖書を読んで初めて、創造者に触れその人生の暗い闇の中に光が差し込むのを体験することができます。 人間は神に造られ、生かされている存在です。人類の始祖アダムは神の掟を破りましたが、愛なる神は人類が自分勝手な道を歩んで滅びに向かっているのを憐れんでくださり、御子イエス・キリストを救い主として遣わしてくださいました。この方が十字架で私たち罪人の身代わりに死んでくださったのです。この神の御子イエス・キリストを自分の救い主と信じる者は救われ、永遠のいのちを受けます。慈しみに満ちた神は疲れた者をも招かれ、真の平安をくださいます。 「神は、その独り子をお与えになったほどに、世を愛された。独り子を信じる者が一人も滅びないで、永遠の命を得るためである。」(ヨハネの福音書3 16) Total Hits - Today Hits - ヨハン早稲田キリスト教会/ヨハン教会 文書宣教部 ヨハン早稲田キリスト教会ファンページ ヨハン早稲田Google+
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覚醒シン・アスカ 小早川ゆたかが居候としてやって来た日のこと そうじろう「お、いらっしゃーい」 ゆたか「今日から色々迷惑をかけると思いますが、よ・・よろしくお願いします!」 こなた「これから自分の家と思ってくれていいからね」 シン「・・・・・・・・・・・・・」 シン「・・・・・・・・・・・・・」 こなた「シンくん、やけに今日は静かだね。せっかく自分の好みド真中ストレートォ!な、ゆーちゃんがやってきたのにさ」 そうじろう「待てッ!こなた・・シンに話かけるな。今、シンは己の中の獣と必死に戦ってるんだ」 こなた「へ?そうなの・・?」 そうじろう「そうだ、必死に自身の本性を抑えようとしている。見ろ、シンの目を! さっきから全くゆーちゃんを見ようとしていない!それはアイツ自身が本性を押し隠そうとしている証拠!!」 こなた「無駄にすごい洞察力だね・・。でもさ、口でなんかブツブツ言ってるし・・今に感情が爆発するんじゃない?」 そうじろう「うむ・・、今のアイツは危険すぎるな。よし、オレが人肌脱ぐか・・」 そう言って、そうじろうはシンの元へと歩いた。 そうじろう「シン、大丈夫か?」 シン「・・・・・・・・・・・」 そうじろう「まぁ、大丈夫じゃないだろうなぁ。必死に本性を押し隠してるんだ。相当の苦痛だろう。 だが、オレはオマエに問いたい!なぜ、本性を隠す必要がある?」 シン「・・・・・・・・え・・??」 そうじろう「おまえが自身のシスコンという性癖に負い目を感じているのはわかってる。だがな、シン・・それがどうした? 男は皆、変態だ。これはどうしようもないことなんだよ・・。 だからシン、己と戦う必要はない。ありのまま・・、ありのままの自分をさらけ出せ。 ほら、ゆーちゃんを見ろ・・!」 シンは言われるがままに、ゆるゆると首を動かし・・ゆたかを見る。そこにはシンにとっての天国が広がっていた。 シン「・・なんて・・可愛いんだろう。目が安らぐ・・!!あの子は・・天使・・?」 そうじろう「そうだ。可愛いだろう、小っちゃいだろう、思わず自分のものにしたくなるだろう・・。 さぁ、次におまえがするべきことは・・・・なんだ?」 シン「もちろん・・突撃です!そうじろうさん!!」 そうじろう「わかってるじゃないか・・・。なら・・行けィ!!」 シン「オオオオーーーッ!!!ジィィーーーク・シスコンッ!!!!!」 ついにシスコンとして究極の覚醒を果たしたシンは、獣のような叫び声をあげながら・・ゆたかに突撃していった こなた「あーあ、壊れちゃったよ。ってか、おとーさん・・火に油注いだだけじゃん・・」 そうじろう「なーに・・どうせいずれは決壊していたダムのようなもの。それをオレが壊すのを早めてやっただけのことだ。シンも本望だろうさ・・」 そして覚醒したシンは、ゆたかに近づき・・声をかける 覚醒シン「ゆたかちゃん・・・だっけ?」 ゆたか「え・・?は・・はいッ!!」 覚醒シン「おっと、自分の名前をまだ言ってなかった。オレの名はシンだ。略して、お兄ちゃんって呼んでくれ」 ゆたか「お・・お兄ちゃん・・ですか?」 覚醒シン「うーん・・。ちょっと愛が足りないかな。もっとこう・・愛を込めてお兄ちゃんって呼んでくれるかな?さぁ・・!」 ゆたか「あの・・えと・・、お・・お兄・・・ちゃん・・!!」 覚醒シン「ああ・・、いい!その恥ずかしがってる感じ、最高だよ!!もっと・・・もっとお兄ちゃんって呼んでくれーッ!!」 ゆたか「・・え・・ええッ!!?」 こなた「もはやただの変態と化したかー。哀れだね・・。シンくんには少し失望したよ・・」 そしてそうじろうは・・なんともいえない邪悪な笑みを浮かべながら、この状況を見ていた。 そうじろう(フハハハハッ!!!計画通り! こなたとシンのフラグはたった今消滅した・・。さらにシンはゆーちゃんとのフラグも立て損ねている・・。 もはや、シンはただの変態・・恐るるに足らず!こなたとゆーちゃんは・・共にオレのものだ!) 全てはそうじろうの手中で事が進んでいることも知らず、シンは変態的行為(好意)を・・ゆたかにし続けたという。 終わり 戻る 次
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「知ってる? この間の事件」 「北斗町の辺りで起こった事故でしょ」 「……事故じゃなくて、殺人事件らしいよ」 「殺されたの? 事故じゃなくて?」 「それって、ハハオヤが隠そうとしてるらしいよ」 「なんで?」 「知らないよ。でも、そのおかげで自分がなんで死んだか分かってもらえないのがくやしくて……。 だからさ、出るらしいよ。こんな雨の日に……」 「ウソ……」 「バレー部の先輩も見たって」 「どうだったの?」 「泣いてたって。 雨の中、傘もささずに泣いてる女の人がいるから、 なんだか嫌だなーと思って遠回りしていこうと思ったんだけど、いつのまにか泣き声がだんだん大きくなってきてて、振り向くとそこにっ……」 「ヤダ、おどかさないでよ……」 「でも、なんだかカワイソウ」 「やめときなよ、そういうの。よくないんだよ」 「どうして?」 「同情するとね、連れてかれちゃうんだよ。この世に未練のある、寂しい幽霊に」 教室の扉は少し開いたままで、まだ廊下にいた僕は、そんな話声を聞いていた。 僕は扉に手をかける。古いせいか少しきしんで、中の声がぴたりと止まる。 扉を開けると、中には女子が数人残って机を囲んでいる所だった。 「あ、ナオキ君……」 その内の一人が、驚いたように言う。 「忘れ物、取りに来ただけだから。 なんだか話の邪魔しちゃったみたいで、ごめんね」 僕がそう言っても、彼女達はイタズラをした子供が見つかった時みたいに、僕と目を合わそうとしない。 下を向いて、なんだかやりにくそうにしている。 別に悪いのは彼女達の方じゃない、話を立ち聞きしていた僕の方なのに。 なんだか嫌な気分だった。悪い事をした方が、かえって気を使われている感じ。 あまりこんなところに長く居たくない。僕は自分の机から忘れ物を取って、さっさと教室から出ることにする。 そして開き戸に手をかけた所で、また後ろから彼女達のささやき声が聞こえた。 今度は聞こえないように、後ろ手でちゃんと扉を閉め切る。 ……それでも、彼女達が言っていた話は、僕の頭からなかなか離れてくれなかった。 『こんな雨の日、北斗町で殺された女の幽霊が出る……』 下らない話。そんなの、悪いウワサに決まってる。 それなのに、僕はその場所にいた。 何を期待しているのだろう。 僕の目の前の道沿いには、頭上を覆い隠すほどの木が生い茂っていて、それが延々と続いている。こんな雨の日は見通しが悪いから、人も車もめったに通らない。 雨と風は段々と激しさを増して、頭上の木々を揺らす。黒い影がバサバサと揺れる様子は、髪を振り乱した生首が揺れてるようだ。 ……僕は頭を振って嫌な想像を打ち消そうとする。 あのウワサが嫌な事を想像させるのか、こんな場所だからあんなウワサが語られるのか、それがどちらかなのか、僕にはわからない。 横殴りに叩きつける雨が、傘を持つ僕の手を濡らしてゆく。僕はここに居る事を、段々と後悔し始める。 こんな場所、長く居るもんじゃない。この場所は、暗く、寂しい。 そんな事、ある筈無いんだから。早く帰るべきなんだ。 突然、森からの風が強くなり、僕の傘を奪う。僕は慌てて傘を追う。地面に落ちた傘を拾って、さし直そうとした時、少しだけ持ち上げた傘の下に、学校指定の靴が目に入った。 僕はその靴から、目を離せない。だって、さっきまで誰もいなかったはずなんだ。 降りしきる雨の底から、何か別の音が聞こえる。 傘に大粒の雨がぽつぽつ当たっている音に混じって、息も絶え絶えに、苦しそうな、しゃくりあげる声が聞こえてくる。 声にならない声は、だんだんと大きくなっていた。 ……泣いている。 思い切って、僕は視線を上げた。 そこに、制服を来た女の子が立っている。 両手を顔に押し当てて、うつむきながら泣いていた。 ずっとそうして、雨に濡れるのもかまわずに。 長い髪が両手からこぼれて、涙の延長の様に雨が伝っていった。 僕には彼女がかすんで見えた。 それは比喩じゃなくて、僕の目の前に突然現れた彼女は、その体の向こうに景色が透けて見えている。 それなのに、なぜか雨は彼女に当たって、その体をますます冷たくさせているように思えた。 だから僕は、彼女に傘を差し伸べた。 一つの可能性を信じながら。 「姉さん、なんだろ……」 「……ナオキ?」 僕の声を聞いて、姉さんはようやく顔を上げた。 『始まりのウワサ』 僕の姉は1ヶ月前に死んだ。 その日、遅くまで学校に残っていた姉さんは、帰り道を急ぐために普段通らないような、人気の無い道を帰っていたらしい。 運悪く雨も振り出し、傘を持っていなかった姉さんは、走って帰ろうとしていた。 姉さんと同じように帰り道を急いでいた車とドライバーがいて、この道なら人もいないだろうとスピードを出していて、雨で視界が悪くなっていたせいで、寸前まで姉さんを見つける事が出来ず、そして……。 姉さんは即死だったそうだ。 ドライバーは一度怖くなってそのまま逃げ出したそうだが、後で自首したらしい。 らしいと言うのは、その辺の事は全て母さんがやって、僕はその人の顔も見た事が無いからだ。恐らく、これからも見ることは無いんだと思う。 そう言う僕は、姉さんの顔もよく見ていない。 葬式の日、姉さんの体は損傷が酷いから見ないようにと、棺に付けられている、顔を見るための扉は開かれなかった。 棺の側に置かれた遺影と、お坊さんのお経。葬式には僕のクラスや姉さんのクラスの人達もたくさん来てくれたが、あまりにも突然な事に、悲しむよりも戸惑う人の方が多いようだった。 僕も、姉が死んだと言う実感は無かった。 ただ、そう思うのは僕達があまり仲の良い姉弟では無かったからかも知れない。 中学に入ったくらいからだろうか、僕は姉さんとあまり話をしなくなっていた。 いわゆる思春期ってヤツになるとそうなるもんだと周りの友達は言っていたが、原因はそれだけじゃなかったと思う。 僕の家は、母さんと姉さんと僕の3人家族で、小さい頃から姉さんは母さんが家事をするのを手伝っていた。 僕はそんな二人の間に入る事が出来ず、いつも遠くからその様子を見ていた。 だが、いつの頃からか母さんは仕事で忙しくなり、姉さんばかりが家事をするようになっていた。 姉さんは僕に家事を手伝うように言っていたが、僕はそれを無視した。何だよ今更、という感じで。 姉さんは段々と口うるさくなり、僕はそれに黙って対抗した。姉さんをの事を、段々疎ましく思っていた。 そんな折に、事件は起きた。 母さんはあれから毎日、仕事から帰ってくると泣いている。僕は慰める事もできない。そうしたほうがいいのかさえ、分からない。 母さんがあれだけ泣いているのに、僕にはまだ、その実感が湧かなかった。 ──その姉さんが、今こうして目の前にいる。 「何よ?」 「……別に」 あれから姉さんを連れて、家に帰った。 母さんに会わせようと思ったけれど、まだ帰って来ていなかったので、とりあえず風呂場からタオルを持ってきて姉さんに渡した。 姉さんはなんだか困ったような、不思議そうな顔をしていた。 それから、飲めるかどうか分からないけれど、紅茶を二人分用意して僕の部屋に行った。 不思議と、もうその頃には姉さんの体はすっかりと乾いているように見えた。 僕は姉さんが使わなかったタオルを使って、濡れた髪を拭く。 とりあえず何を話していいか分からなくて、僕はテレビを付ける。姉さんも、頬杖を付きながら勉強机のイスに座った。 僕は見るでもなくテレビを見ながら、何となく姉さんに聞いて見た。 「姉さん、死んでるんだよね」 「たぶんね」 「幽霊、なんだよね」 「きっとね」 「……何でここにいんの?」 「何それ! 私がここにいちゃいけないって言うの!?」 「いやー、そういう事じゃなくてさあ……」 実際、自分の気持ちがよく分からなかった。 死んだはずの姉とまたこうして話す事が出来る、それは家族としてなら当然喜ぶべきことなんだろうけど。 でも、僕には姉さんが死んだって言う実感はずっと持てなかったし、今こうしているのも、しばらく旅行でいなくなってた人がようやく帰って来たって言う感じだ。 それ以前に、ずっと話もしていなかったし。……僕って冷たい人間なんだろうか? でも、こんな時って何を話せばいいのだろう。感動のご対面よろしく、目に涙を浮かべながら「姉さーん」とか叫んで抱きついたりした方がいいんだろうか? ……僕にはちょっと、出来ない気がする。 「はあ、せっかくまたこうして会えたっていうのに、憎まれ口はちっとも変わらないんだから。 一応感動のご対面になる訳なのよ? もっとこう、目に涙を浮かべながら、姉さーん、とかいって抱き付いてきたりしないの?」 さすが姉弟。変な所で考える事が似ている。 「じゃあ、今からやろうか?」 僕は姉さんに向かって両手を広げる。 「やめなさいよ、気持ち悪い」 ……憎まれ口はお互い様だと思う。 「……あはっ」 突然、姉さんが笑い出した。 「どうしたの?」 「なんかね、こんな会話さえも、ずっと誰ともしてなかった気がしてね」 それはきっと、気のせいじゃないんだろう。 「姉さん、どれくらいの間あの場所にいたかとか、憶えてる?」 「えっ、うーん……」 姉さんは唇に手を当てながらしばらく考えていたが、答えは出なそうだった。 もしかして、自分がどれくらいあそこにいたか記憶が無いんじゃないだろうか。 ……幽霊だから? 「いや、分からないならいいよ。 それよりさ、家に帰って来ようとか思わなかったの?」 「んー……、なんか、そんな事思いつきもしなかった。今考えると変なんだけど。 なんだかあそこにいる間は、電気も付けていない締め切った部屋みたいに、何にも見えなくなっちゃっていたのよ。もうまっくら。バカみたいに思えるかもしれないけど、そうなの。ナオキが来てくれて、はじめて顔を上げられたんだもの」 「そうなの?」 「うん、そうなの」 よくわからないけれど、幽霊になってしまうってそう言う事なんだろうか。僕は少しの間、その場所から動けない姉さんの事を考えていた。姉さんはそんな僕を興味深そうに見ている。 そして不意に、一言。それは本当に何気なく、姉さんの口から出た。 「ね、ありがとうね、ナオキ」 思いがけない一言に、僕はしばらく呆然としていた。 「ど、どうしたのさ、いきなり」 「だってさ、もしナオキが来てくれなかったら、私まだあそこにいたかもしれなかったでしょ」 「べ、別に大した事してないよ」 「傘、差し出してくれたでしょ」 「いや、別にそんなの……」 口篭る僕を、姉さんは不思議そうに見ている。そして、「変なの」と言って笑った。 「でもさ、ナオキが来てくれるとは思わなかったな。なんか私、避けられてるみたいだったしさ」 そう、確かに前までは、姉さんのことを避けていた。無視して話さないようにしていた。近くにいるだけで妙にイライラしたり。 でも、だから今だって不思議なんだ。姉さんを探しに行こうとしたり、こうして平気で話してる事も。 「姉さん、あのさ……」 僕がその事を話そうとした、その時。唐突に部屋のドアが開かれた。 母さんだった。ドアの隙間から、非難するような目で僕を見ている。 「……楽しそうね」 どうやら、さっき姉さんと話していた時の笑い声を聞かれたらしい。まずい事に、テレビもつけっぱなしのままだ。 「いや、これは……」 「……」 母さんには、姉さんは見えてないんだろうか。 僕はちら、と姉さんの方を見る。姉さんも母さんを見ていた。 視線を母さんに戻す。母さんは、僕を見たままだった。 「ねえ母さん、母さんは……」 「何?」 「……なんでもない」 見えてないのに変な言い訳をするのもどうかと思い、僕はあえて何も言わなかった。母さんはそんな僕を、部屋に入って来た時と同じ冷たい眼差しで見たまま、ドアを閉めて居間に戻って行った。 しばらくして、押し殺したような泣き声が響く。 それは、姉さんが死んだ事を悲しまずにテレビなんかを見てへらへら笑っている僕を非難しているに違いなかった。 その声を聞いた姉さんは、顔をしかめて吐き捨てる。 「……母さん、変わらないのね」 その時の姉さんの顔は、僕が始めて見る顔だった。 「姉さん?」 「ん……、ああ。ごめんね、ナオキ。私もう自分の部屋に戻るわ。紅茶、ご馳走様」 姉さんの分のカップはもちろん減ってはいなかったが、触れてみると、なぜか僕のカップよりも随分と冷たくなっていた。 「ねえ、私の部屋、まだそのまんま?」 「うん。母さんが掃除してるから、きっと何も変わってないと思うよ」 「そっか……」 そう言った姉さんは、何だかちょっと嬉しそうだった。 まるでさっきの表情なんか、最初からどこにも無かったみたいに。 それじゃあ……、と言って姉さんは部屋を出ようとしたが、急に何かを思い出して振り帰った。 「ね、ナオキ。 まだ言ってなかったよね」 「何?」 「……ただいま」 不意に飛び出した姉さんのその言葉。けど、僕も当然のように答えていた。それはもう、随分久しぶりに言ったのだけれど。 「……うん、おかえり」 姉さんはへへっ、と照れ臭そうに笑って、手を振りながら扉の奥に消えた。 一人になって、部屋の電気を消してからふと考える。 あんな風に姉さんと長く話をしたのはどれくらい久しぶりだったろう。 何週間、何か月、もしかするともう何年にもなるかもしれない。 姉さんと仲が悪くなっていた事。アレは何が原因だったんだろうか。 今日あんなに話すことが出来たのも、何かが変わったからだろうか。 何だろう、何が変ったんだっけ。 ……わかんないや。変わった事なんて何もないよな、多分。 明日から、またいつもと同じような毎日が始まるんだ。 ただなんとなく、そんな事を考えながら僕はいつのまにか眠りに付いていた。 登録タグ あなたの眠りの暗闇に 始まりのウワサ 小説 狐屋 コメント コメント 人の画像加工して使うのはやめましょう。 (2011-02-17 18 05 32) このページの先頭へ
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あなただけのfairy 馆林见晴以虚拟偶像名义演唱的曲目之一。 歌曲信息 作词:まつざきゆうこ 作曲,编曲:水野雅夫 演唱:馆林见晴 歌词 もしも願いが かなうのならば あなたの夢の中を 翔びたいの 小さなからだ 透きとおる羽根 あなたの肩に そっと とまりたい あなただけのFairy 側にいるから わたしだけのMemory こころに重ねていく 大好きだから 今夜は このまま ここで 眠らせて 夢から 覚めた途端 独りだから あなただけのFairy 瞳 閉じれば ふたりだけのStory 抱き締めたまま そっと おやすみなさい 收录CD 馆林见晴 Dream of you… (1998/01/21) 相关页面 音乐
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あなたにさいこうなふゆのひを【登録タグ あ なるしまたかし 初音ミク 曲】 作詞:なるしまたかし 作曲:なるしまたかし 編曲:なるしまたかし 唄:初音ミク 曲紹介 なるしまたかし氏 の3作目。 もうすぐ春なのにまだまだ寒いですね。(作者コメ転載) KNO氏 がイラストを、灰犬氏 が動画を手掛ける。 歌詞 銀色の地上に舞い降りた奇跡 あなたに伝えたくて 会いたくて・・・ 夕日が沈んで灯り灯る街並み雪道 思った以上に懐かしいけど 二人肩を並べ歩いた日常はもうなくて・・・ ただただ、彼に伝えたい 誰も私の姿は見えない 見えるは冬の雪景色 この世に戻れない私は何なの?ねえ、天使? 教えて あなたの温もりを感じたい お願い 一夜だけでいいから もう一度この手であなたに触れたいの あの日々 あの幸せ 呼んでる 白い世界に溶けて響く想いは 誰ひとり 見えやしない残響 ただ 闇に響く 私の最期に涙枯れ 叫ぶあなたは 本当の気持ちを教えてくれた 震える声で「私も好きだ」って言おうとしたの 死神が口をふさいだ やめて 私を何処に連れてくの 黒い服の甘いマスク 私を彼のとこに戻してよ ねえ、悪魔? 不幸よね 私だけいつも仲間はずれ お願い、私だけの奇跡―― 廻り廻る魂に触れてほしい 涙が止まらないわ 弱虫 時計の針が 私の背を叩くの 急いで 消える前に 「好き」だと ただ 叫びたいの あなたの好きなあの場所 今そこに・・・ 吐く息が白く温かく 見えるでしょう? 「ごめんね、おまたせ」何気ない会話に 自分の想い 添えて贈るわ 時計の針が十二で重なるとき 私は星になって 永久に眠るわ コメント 名前 コメント